かんそうおきば

ポエミー

パダラマジュグラマかんそう

配信されてたものをいそいそと観ました

 

何百年か後の世界、何もかもが上手くいかない世界

環境は汚染され自然の食べ物を口にすることは非常に稀

そんな食糧不足の世界を支えているのがカイダム(?)という養鶏場 そこから世界中に鶏を出荷している。

しかしここ最近ではその出荷量も減り、世界中の誰もが腹をすかせていた。狐のトシリモとメグメもまた例外ではなかった。

メグメの弟、キナミダは病に倒れ栄養のあるものを食べなくては今にも死んでしまいそうな状況であるためメグメはトシリモの誘いに乗り、カイダムへと鶏を盗みにいく。

たどり着いたカイダムで出会ったのはまるまると太った鶏ではなく痩せっぽちのオスのひよこだった。名前もない無邪気なそのひよこに二人はタックと名付ける。

 

そんな感じ

 

全体的に暗い雰囲気の中でひたすら明るいタックが観客の救いになってるなあと思っていたんですがこのタックの底抜けの明るささえカイダムが生み出した闇なんですよね

オスのひよこは要らないからと殺されてしまうカイダムで、必死に死の運命から逃れたタックは無理矢理に人生に希望を見出そうとして「どんなときも笑う」と誓うのが辛い……前半の明るさは生まれたての無知による無邪気さからきてるのかなあと思っていたらあれ全部無意識の上の演技なんだなあ

記憶喪失でカイダムの中の惨状も忘れているけど一度は確実にみていて、うっすらと自分の前に敷かれた死へのレールが見えていてそれに抗おうと決めたタックの自己防衛があの明るさなんだなあと

今回すごいなあと思ったのがメイクで メグメや工場長、リンリンの顔に涙のようなメイクが施してあってそれが見事に衣装と馴染んでいるから最初は全然気にならなかったんですけど、泣く演技になった途端そのメイクが浮き上がってきて道化師を見ているようでゾワッとしました。

この話悪い人が一人もいなくて、悪役かと思っていた工場長ですら実は奴隷で出荷されていく鶏を涙を流しながら見送ってるんだ〜〜〜〜つらい

工場長も時代に人生を潰されたひとりなんだなあということが分かってなんとも言えない気持ちに……いったい何羽の鶏を見送ったのだろう

この舞台全体を通してみんな変わるんですよね 人の気持ちや情を理解できなかったトシリモがタックと出会って人の気持ちを考えて行動するようになり、逆に人の気持ちを理解できなかったトシリモを哀れんでいたメグメが弟の死を目前に我を失って人の気持ちより己の欲を優先し、タックは絶望するということを思い出し、そしてまた希望を持つ

荒廃した世界によって人生を狂わされた人々(?)が生にしがみつくそんな話でした

舞台のセットとか本当にその世界に入り込んだ気持ちになれて素敵だなあと思いました。ぜひ生で見たかった……タックに脇を通り過ぎてもらいたかった……

この舞台セット観客もセットの一部なんですよね ある時は雌鶏たち、ある時は草はら、ある時は雄鶏たちの死骸 こうやって舞台の中に入り込めることってなかなかないと思うのでこれは一度体験してみたいなあ