かんそうおきば

ポエミー

演劇女子部 ミュージカル「TRIANGLE-トライアングル-」の感想

LILIUMを観るためU-NEXTに登録したらトライアングルも観れる事に気づいて喜び勇んで鑑賞 モー娘。沼にゆっくりと入水している……。

 

あらすじ

争いのない星、アルファでは女王、イオタのお告げが絶対であった。その日も女王がお告げを伝えていたが、その日は特に重要なお告げがあった。女王の一人娘、サクラ姫が結婚するというのだ。しかし、当のサクラ姫には実のところ想い人がいた。アルファで使われるエネルギー、エレクの供給源であるスワスワを育てるオメガ人、アサダである。しかし、イオタのお告げによるとサクラの結婚相手は争いの絶えない星、ヴィータ星から来た、触れる事で相手の心を読む事ができるヴィータ人であるという。移民の多い惑星アルファにおいてもヴィータ人はただ一人、最強の戦士キリ中尉しかいない。サクラはアサダへの想いとお告げとの間で揺れ動く……。

 

的な

 

アルファとベータどっちも観ることで完成する舞台ですね アルファだけ、ベータだけでも楽しめるけど両方見た方がお互いを補完しあって、なぜあの時あの人はこんな行動をしたのか?この人のこの時の心情はどうなのか?がわかるのでより楽しい……

基本的にアルファがサクラ姫視点、ベータがアサダ視点って感じ 実のところアサダはヴィータ人で人に触れると心が読めるんですけどアルファ版ではそれがわかるのは終盤なのでアサダが主人公となるベータ版は実質的に謎解き編といった感じに受け取れますね

でもアルファとベータ完全に同じ話かっていうとそうではなく、少しずつ時系列がずれていてそれによってリアクションが少しずつ違ってます。全体のストーリーは変わらないけど登場人物の印象がだいぶ変わってきます。

その代表格が鞘師さん演ずるキリ少尉 アルファ版では、キリ少尉は最初はアルファ星を征服するという目的で偵察に来ていたということが彼自身の口から語られます。しかし彼の宇宙船は墜落、アルファ星に不時着し重症を負います。その時サクラ姫が駆け寄り、「止まれ、血」とキリ少尉を抱きしめます。キリ少尉は互いに心の読める争いの絶えない星から来ているので人を信じることが出来ないのですがサクラ姫は表裏のない性格で嘘をつかないため喋る言葉と心の声が全く同じ。そのことにキリ少尉は驚き、そして凍っていた心を溶かす……

このエピソードはベータ版では語られません アルファでもベータでもキリ少尉はサクラ姫に対して冷たい態度をとりつつも実はサクラ姫に想いを寄せてるのですが、このエピソードが語られるアルファ版の方が、なぜキリ少尉が産まれた星を捨てて惑星アルファに移り住んだのか、なぜサクラのことを好きになったのかが分かるので、よりキリ少尉の最初と最後のギャップが大きいなあと思います。

ベータではフォーカスがアサダにあたります。アルファ版では終盤までヴィータの血を引いてることが明かされませんでした(途中で匂わせはあるので観客はなんとなく分かる)が、ベータではアサダが主人公なので観客にもアサダがヴィータであると明かされた状態で話が進んでいきます。

そもそもアサダは自分の心を読める能力をよく思っていないんですよね。「全員が嘘をつかなければ、人の心を読む必要なんてない」なんていうセリフがあるほど。実際アサダはサクラ姫の気持ちを知るたびに傷ついたり迷ったりしちゃうんですね。

でもサクラ姫と結婚する条件が「ヴィータ人の血を引いていること」 アサダは劇中においてここで初めて自分の中のヴィータの血を肯定するというか、喜ばしく思う。でも最終的に彼が選ぶのは「オメガ人の自分」なんですよね

ローズウッドっていう女の子が出てくるんですけど彼女は彼女で自分を犠牲にしてまで愛を貫く人ですね。お告げで結婚を命じられたにもかかわらず結婚を断ったために二度と結婚できなくなります

このローズウッドはアサダのことが好きで結婚を断ったのもオメガ人であるアサダをまもるためという自己犠牲の塊って感じの女の子 まあ言ったらアサダとはなればなれになるのがいやだからっていうある種のエゴなんですけど

つまりアサダのことが好きな二人の女の子はそれぞれ「ヴィータ人のアサダ」と「オメガ人のアサダ」を求めた 求めたっていうか存在を認めたっていうか まあそれぞれアサダの違う面を故意でなくとも要求したんだなあって感じ

ていうか私はてっきり最終的にサクラ姫とアサダがくっついて大団円だと思ってたのに!!!!!!思ってたのに!!!!!!!!!

そんなことなかった

アサダはローズウッドと生きていくことを選び、サクラ姫はお告げの通りキリ少尉と結婚することを選ぶんですよね ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

やっぱり少女漫画を読んで育った身としてはサクラ姫とアサダにくっついて欲しかったなあなんて思うんですけど でもこれで二人がくっついたらなんの成長もないなあとも思ったりはします。サクラ姫は父親と同じようにお告げで定められた相手と結婚し、自分の意思よりも星のためみんなのために生きることを選ぶし、アサダは自分のオメガの血により誇りを持って生きていくんだなあというラスト。

個人的にはアサダ絶対まだサクラ姫のこと好きでしょ!?!?!??!ローズウッドのこと利用してない!?!??!???!って思っちゃったりするんですけど けど でも最後にサクラ姫がアサダの手を握るシーン あそこで私たち観客には語られなかったサクラ姫の決意がアサダだけには伝わったんだろうなあと思います

結果的にはまるーーーーく収まってますね 星の未来的には一番明るい選択だったと思う。ンンン〜〜アサダとサクラの恋は星のために散ったのだ〜〜〜〜〜くそ〜〜〜〜〜〜〜

アサダがローズウッドと生きることを選んだのはある種の贖罪にも思えますね ローズウッドのおかげで好きに生きれてサクラ姫と過ごすことも出来て……そう思うとローズウッドごめん……ってなる気持ちもわかる……

最後サクラ姫はキリ少尉に笑顔で手を差し伸べているので父親と同じようにいずれ心からキリ少尉を愛するようになっていくんでしょうし、アサダとローズウッドは幸せに過ごしていくんでしょうね

ただ好きだからという感情だけでなく、星のため周りのために自分を殺すということを知った少年少女の成長の物語でした……